辰巳巷談

“よしねえ、見ともない、嫌われて殺すなんて、そんな間抜けなものが江戸にあるかい”

03-13-11[1]
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第1回目は「辰巳巷談」です。
辰巳は東京の江東区、巷談(こうだん)とは、うわさ話のことだそうです。深川あたりの芸者さんを辰巳芸者と呼ぶらしいですね。
鏡花の小説は、タイトルからして読み方が難しいものが多いですね。私はよく読み方がわからなくて困ります。
あらすじは、鼎をめぐるお君と沖津の葛藤に焦点が当てられています。要するに、恋人である人と母である人が一人の男を巡って思い悩み、最後には共に果てるというあらすじ。こう書くと元も子もないですが、最後の展開の速さと、極端な決着のつけ方はいかにも鏡花らしいですね。
どこか「日本橋」を彷彿とさせるところがあります。

画像は絵本辰巳巷談です。装丁は小村雪岱をはじめとする6人の画家の手によるものだそうです。
昔の本は趣があってステキですね。現在は大量生産で、1冊の本にあまり手を込めないようです。以前古本屋のおやじさんが、三島由紀夫の全集なんかは、絹を使った装丁になっていて雰囲気があると言っていました。確かに持ったときの手触りが違うんですよ。

さて、この物語では鏡花の得意なモチーフがいくつも登場します。どこか儚げな美青年、不幸な境遇で元おいらんの少女、未亡人の母、荒々しい性格と容姿の仇敵、水、橋の上、夜などなど。鏡花の独壇場ですね。素材もあらすじもほとんど同じなのに、どうしてこう様々なストーリーを書き分けられるのか。それだけ鏡花がこれらのモチーフに囚われていたということでもありましょうが。
鏡花ってどこまで行っても円環なんですね。たとえ文章が円熟しても本質的には変わらない。それこそ澁澤龍彦が「ランプの廻転」で論じていたように、何百という小説や戯曲を書いても、それはぐるぐる表面を廻ってるだけで、中心にいる鏡花はいつも同じ。母親を亡くした時の子どものままの姿でそこにいるのだと思います。

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古書の取り扱いもあるようですね。欲しい…でも、高い!

(辰巳巷談、明治三十一年二月、全集四)

Source: http://blog.livedoor.jp/xxxsoliste/archives/29004028.html