外国人芸者として

2016.10.12  |  メディア, 雑誌  |  外国人芸者として はコメントを受け付けていません。

外国人芸者として

〜日本伝統の趣と花柳界で生きる困難さ〜

 

*本文は2016年3月に記者DAN•GRUNEBAUM氏によりオンラインサイト” Metropolis”へ掲載されたものの要約です*

 

 

 

文化人類学者で、オーストラリア生まれのフィオナ・グラハム氏が初めて日本に来たのは15歳の時、留学生としてであった。今回、メトロポリスは現在正式な芸者として国内で活動している彼女にインタビューを行い、これまでの彼女の日本での「日本伝統の趣と花柳界で生きる困難さ」をテーマに語って頂いた。

 

 

ー日本で芸者になろうと思ったきっかけについて教えてください。

 

英国オックスフォード大で社会・文化人類学の博士コースを修了後、BBC等の放送局の番組制作のディレクターとして働き始めました。その当時、芸者の伝統に関する番組を提案し、私自身もそのプログラムのために「紗幸」として浅草芸者界へ修業に入りました。結果として、花柳界は日本伝統特有の上下関係も相まって、私が先輩芸者であるお姉さん達に自由に質問などできない世界であることがわかり、取材のためにはまず私自身が修業を重ね正式な芸者になる以外に選択肢はありませんでした。

 

 

ー修業中で大変だったことは何ですか?

 

正式なお披露目前の伝統修業はとても厳しいものでした。私が受けた修行は古典的な物だったので、特に金銭的なプレッシャー(自身でも借金していた)や、本当に修業を続けることで外国人である自分がデビューできるのか、という不安があったのを覚えています。芸者界での新人につきものなのが、このお披露目前の金銭的プレッシャーなのです。お披露目前はお給料はいただけませんが、修業にかかる費用は自身で負担しなければなりませんし、かといって正式に芸者になれることが保証されているわけではありません。

 

 

ー映画や本として作品化されている“Memoirs of a Geisha”について、内容を教えてく下さい。

 

“Memoirs of a Geisha”は実際の芸者へのインタビューを基に作ったもので、芸者世界の伝統・文化が色濃く反映された作品となっています。ただ、残念なのは、この小説内容は戦前の気質をフィクションしたものであって、現在の花柳界とは全くことなっている点です。

 

 

 

ー芸者に関する勘違いで最も多いのはどういったものですか?

 

たくさんありますね。まず、外国人からは芸者が性風俗関係の仕事として捉えられていること。芸者自体は昔から性風俗に直接関する仕事はしていません。今の時代に売春婦として働くのであれば、芸者になるよりもずっと簡単が方法がいくつもありますので。西欧諸国の女性の多くは、芸者は男性に迎合し、従順な仕事であるという古典的な考えを持っていますが、昔から芸者は働く女性として自立していて、男性に従順に従うというだけの仕事ではありません。

 

 

ー芸者さんへお仕事を依頼されるのはどのような方々ですか?

 

私の場合、小さな宴会であればお客様はお1人のこともありますし、大きなものでは1000人を超えることもありました。年代は1歳から90代まで様々で、宴会以外にも様々な芸者としてのお仕事をお受けします。お店の新装開店や開業から、貿易関連のイベントまで、業種は様々です。成田空港で新航路のオープニングイベントに呼んでいただいたり、個人の誕生日会に参加させていただいたこともありました。海外への出張も承っています。

 

 

ー外国人のお客様は芸者さん達へお仕事を依頼するとき、どのような内容を期待しているのでしょうか?

 

 

多くの外国人のお客様は芸者について詳しくご存知ない事が多く、日本の伝統芸能をご覧になる事自体をご期待されているように思います。私共芸者は宴会でお客様と席を共にし、積極的に場を盛り上げ、私達自身も楽しみます。www.sayuki.netからご依頼頂ければ、宴会を始めどのような会場でも芸者を派遣させていただきます。ご予算とお客様のおおよその人数のみお伝え頂ければ、内容はこちらからご提案いたしますし、準備等は全て私共で承ります。

 

 

ー外国人だということで、「芸者のお母さん」となることを認めていただけなかった、と伺いました。

 

以前私が所属していた置屋のお母さんが体調の関係で引退されたことを機に、私は4年間の修業後、独立し自身の置屋を持たせていただけないかとお願いしたかったのです。しかし、「外国人だから」という理由で独立は認められませんでした。私は芸者を始めた当初より欠点が多くありながらも努力を重ねてきました。組合から就労に関わる正式な許可も頂いており、日本人芸者と同等の決まりで置屋を持たせていただきたかったので、非常に残念でした。それでも、この決定以降現在まで私自身は独立した置屋という形で芸者を続けてきましたが、今でも時折浅草の料亭を使わせていただきます。残念なことはこの件について海外のメディアでは異なる解釈で表現されてしまいました。

 

 

 

ー芸者文化自体は、相撲のような外国人への大々的な就労PRなしに今後も存続していくことは可能なのでしょうか?

 

現在は世界各国から相撲業界へ飛び込み、修業の傍に日本語を学ばれている力士さんが多くいらっしゃいます。しかし芸者は「話すこと」を避けられない仕事であり、気配り、ユーモア、広い視野、そして日本文化に即した完璧なサービスの提供を求められる仕事です。これは「ほぼ」日本人でないとできない事だと思います。

また、永住権を所有していない外国人が芸者として働く事は法律的にも、芸者界の掟としても許されていません。万が一そのような外国人芸者を雇用する置屋があった場合は、法的に処罰される可能性があります。

 

私がデビューして以来、数人の日本人と結婚している外国人が芸者としてデビューし、地方で芸者として働いていました。しかし、これは地方に限った話で、現在、特に都心では1人以外はこのような芸者は皆芸者を辞めてしまいした。多くの外国人が着物と踊りに魅了され芸者になりたいと思うかもしれませんが、芸者の仕事は奥行きが深く、そのような表面上のことだけではありません。

 

花柳界だけでなく、東京で活動される企業の皆様にとって、経済的プレッシャーが強く、困難になっている時代です。例えば、日本に来たばかりの外国人を面白半分、体験で芸者として出そうと思っても、日本の法律上そういうことはできません。法律によって、日本の美しい花柳界文化を壊すようなことができないようになっていて良かったと思っています。日本に長年いて、日本語を熱心に勉強していて、10年連続で日本に滞在しているという義務を果たした人のみが獲得できる永住権を持っている方なら別ですが。

 

今後も日本の法曹界は毅然とした態度でそのよう十分な覚悟無しに伝統芸能に飛び込もうとする外国人を排斥し、芸者界を始め、貴重な日本伝統芸能を守っていくべきだと私は考えています。

 

芸者界の仕事は、それぞれの組合が定める地区内のみで依頼され、芸者に係るお花代も地区ごとに定められていますので、芸者同士、もしくは地区同士の価格・賃金競争が起こらないようになっています。この掟を知らない、もしくは理解していない外国人の芸者が安価で違法な雇用形態で就労することは、芸者界の破局への一端となる可能性を大いに含んでいます。

 

 

ー日本への観光ブームが芸者へ与える影響を教えてください。

 

ここ数十年で、多くの日本人は白塗りをした芸者に興味がなくなってきています。その結果、需要がない芸者の数は激減しました。しかし近年になってようやく需要回復の兆しが見え、特に外国人同様に芸者についてよく知らない若い日本人が興味を持ち始め、宴会文化の代表的なものとして芸者を捉え始めたようです。芸者にとって、観光客は本物の日本伝統芸能に興味をお持ちいただき、正当に評価していただけるという点で重要なお客様です。

 

 

ー芸者になるためには多大な費用が必要かと思いますが、どのような部分でお金がかかるのか教えてください。

 

上流芸者はお客様とお会いする際、一式100万円相当の着物を着ることもありますので、身の回りの物はかなりの負担になります。また、日々のお稽古も参加する、しないに関わらず、継続的に費用がかかります。私の場合、父が芸者となった数ヶ月後に末期癌と診断され、看病する母の手伝いをするために頻繁にオーストラリアに帰国していましたが、帰国するたびに増す参加していないお稽古の費用に唖然としていました。結局、私は踊りとお茶のレッスンは諦め、一人でも練習できる音楽、特に三味線やお笛に取り組む以外の選択肢はありませんでした。

 

花柳界の今後の課題の1つに、どのように新人芸者を育成していくか、ということが挙げられます。私は現在に至るまで、8人の芸者衆を置屋に預け、上のお姉さん方にご協力いただきながら修行させてきました。私は今後、花柳界では相撲界同様に若手芸者をスポンサーとして企業がサポートしてくださったら良いのではないかと思います。どのような業種の方でも、ご支援頂ければ幸いです!

 

 

 

 

 

ーご両親は紗幸さん自身の経歴についてどのようにお考えでしょうか。

 

私のことで言えば、私は高校から来日し、その後日本社会で育っていますので、両親はもはや普通の人生を送ることなど想像していないと思います。

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